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相続の基本
相続対策と、相続のまとめ
東海東京ウェルス・コンサルティングの中田昇三です。
第1回目は、何故今相続なのか、2回目は相続財産と評価方法、第3回目は相続税負担と基本的な3つの対策について説明しました。最終回は具体的な対策及び考え方のまとめを説明いたします。
東海東京ウェルス・コンサルティング
中田 昇三
なかた しょうぞう
相続対策について
相続対策は、3つの対策(遺産分割対策、納税資金対策、負担軽減対策)がありますが、今回、各対策の中から、項目を抜粋して説明いたします。
1. 遺産分割対策
■遺産分けのトラブルの心配はありませんか?
今、遺産分けのトラブルが多発しています。
いわゆる相続でなく、“争族”と言われているものです。
具体的な相続対策として、遺言作成があります。
■遺言の種類
<代表的な遺言の方式>
- ①自筆証書遺言
遺言者が自筆で作成する遺言書で、費用はかからず最も簡単な方法ですが、偽造や改ざんの恐れもあり、また、相続発生後に家庭裁判所の手続(検認)が必要となります。 - ②公正証書遺言
遺言者が用意した下書きや口述した内容をもとに公証人が作成する遺言書で、費用がかかります。また2名以上の証人の立会いも必要です。
■ポイント
民法では法定相続割合が定められており、相続の遺産分けをする時には、その法定相続割合を基に相続人全員で話し合って決めることになります。たとえば、子供達が相続人の場合、親の面倒を見たり、引き続き家を守りお墓の管理をしていく子供には、それなりの負担もかかるので、多くの財産がもらえるであろうと予想されるにもかかわらず、子供は皆平等であると主張する人が増えています。言葉は悪いですが、「もらえるものは、もらわないと損」という考え方が広まっています。自分がいくら主張しても他の兄弟姉妹に押し切られてしまうケースが多く、裁判に持込まれる件数も増加中です。
苦労をかけた、あるいはこれから苦労をかけると思われる子には、多めに財産を残したいのが人情ですが、争族はあとを絶ちません。
子供達に争族をさせたくない人は、遺言書作成をご検討ください。
「自分は財産も少ないから関係ないよ」とか、「我が家ではみんな言うことを聞く子ばかりだから大丈夫」という声もよく聞きます。しかしトラブルは金額の大小ではありません。遺産相続で裁判所に持込まれた係争案件の財産額をみますと、遺産額5000万円以下が75%、1000万円以下の場合も3割超となっています。たとえ相続税はかからなくても、トラブルに発展しているケースが多いのが現状です。
2. 納税資金対策
■予想される相続税は、支払いが出来るのでしょうか?
相続税の支払期限は、相続発生から10ヶ月以内です。
相続財産の中に金融資産が多ければ、納税は可能ですが、中には、財産の大半が不動産など、すぐには現金化が難しい場合もあります。
納税対策としては、
- ①早めに現金化して、金融資産を確保しておく
- ②不動産を物納する準備
- ③生命保険金の活用
などが考えられます。
3. 負担軽減対策
(1)財産を減少させる具体策
■贈与の活用
相続対策としても真っ先にあげられるのが贈与です。
■具体的な贈与例
前提条件
- ①相続財産:2億円、相続人:子2人、その他家族は孫2名
- ②子2人と孫2人の合計4人に5年間生前贈与し、その後相続が発生した場合の比較

■説明
- ①何も対策をとらない場合の納税負担予想は3,340万円です。
- ②基礎控除額以内の贈与として、子2人と孫2人の計4人に、年間100万円ずつ、5年間実施した場合には、納税負担は2,740万円となり、600万円の軽減となります。
- ③年間300万円ずつを4名に、5年間実施した場合、贈与税は380万円かかりますが、相続税は1,560万円で合計の納税負担1,940万円となり、何もしない場合と比べ、1,400万円の軽減となります。
■贈与のポイント
- ①贈与税の基礎控除額 110万円以内の贈与の活用の場合
贈与税はかかりませんが金額が少ないため、財産額を減らすには効果が少ないことから、人数や年数を増やすなど、早め早めに対応することが重要です。 - ②贈与税を支払う場合
相続税の予想負担率と贈与した場合の負担率を比較して、負担率が低い贈与額を選択することで、適正贈与額を見極めることが重要です。 - ③その他の贈与の特例の活用
子や孫が住宅取得するときの、住宅資金贈与の特例や、教育資金の一括贈与の非課税措置、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置など贈与の特例もありますので、実情に合った贈与をご検討ください。
- 注意事項
- 相続で財産を取得した人が、相続開始3年以内に贈与で取得した財産は、相続財産加算され、相続税を算定することになりますのでご注意ください(贈与の三年規制)。
(2)特例の活用
相続については、各種特例がありますので、活用することで、納税負担軽減につながります。
特例としては、「小規模宅地の評価減の特例」、「生命保険の非課税枠の活用」、「配偶者の税額軽減」の特例 等があります。
-
①小規模宅地の評価減の特例
・被相続人等の居住の用に供されていた宅地 ... 330m3まで80%減
・被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 ... 400m3まで80%減
(貸付事業以外の事業用の宅地等)
・同貸付事業用の宅地等 ... 200m3まで50%減
※内容によって併用利用についても可能です
※居住用に供されていた宅地等の適用については、同居等要件があります - ②生命保険の非課税枠の活用
死亡保険金は、みなし相続財産となりますが、非課税枠(500万円×法定相続人)を超えた額が相続財産に組み入れられます(ただし、契約者と被保険者が被相続人、受取人が相続人という形態の保険契約が対象です)。
年齢が70歳などの一定の年齢を超えた場合、以前は保険加入が難しかったですが、今は、一括払い方式の貯蓄性の保険商品も開発されています。
せっかくの非課税枠ですので、空き枠を利用することで効果的な対策となります。 - ③配偶者の税額の軽減
被相続人の配偶者が遺産分割などで実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税はかからないという制度
・1億6,000万円
・配偶者の法定相続分相当額<例>
<遺産額> <配偶者の相続分> <配偶者の相続税額> <理由> ケース① 1億円 全部 → 全額軽減 法定相続分を超えているが1億6,000万円以内である ケース② 4億円 2億円 → 全額軽減 1億6,000万円は超えているが法定相続分以内である - 注意事項
- ただし、次に配偶者に相続が発生した時は(配偶者がもういないので)配偶者の税額軽減は使えなくなるため、二次相続まで展望した対策を検討する必要があります。
4. まとめ
- ①相続を考えるには、対策は人によって事情が異なります。
- ②まずは全体像を把握したうえで、何が問題なのか課題を抽出することです。
なかには、対策ありきで行動する方もいますが、じっくり現状分析をすることです。 - ③最近、子供たちは独立して別居している家庭が増加しています。
その中で、将来は施設入居を考えている方も多くなっていると思いまが、その際の自己資金の準備も必要かと思います。
贈与などで財産を減少させることも重要ですが、まずはご自分達のことを最優先したうえで、相続対策を検討してください。 - ④忘れてはいけないのは、相続トラブル発生の可能です。金額の大小にかかわらず、争族は発生しています。
- ⑤また、いざという時に相談出来る専門家を用意しておくことも重要です。
急な場合に、誰に聞いたらいいのか、相談したらいいのか、迷ってしまうこともあります。 - ⑥機会があれば、家族を交えた話し合いも必要かと思います。
大事な財産です。スムーズな引継ぎが出来るようご検討ください。
今回は相続対策のまとめとして、具体策中心にご説明しました。
相続は、誰しもが避けて通ることの出来ないテーマです。
平成27年に相続税の改正があったばかりです。この機会に、一度シミュレーションしてみて、現状把握されたらいかがでしょうか。
相続はわかりづらくて面倒だというイメージがあり、つい先送りとしがちなテーマです。でも、大切な財産を、大切な家族に承継していくことです。一度腰をすえて考えてみましょう。
ファイナンシャル・プランナーとして、東海東京証券のお客様向けに、FP業務を行っている。 少しでも多くのお客様に満足していただけるように証券税制・相続のコンサルティングやセミナー講師として活動。東海東京ウェルス・コンサルティング株式会社に在籍中。
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